【名蔵アンパル】
名蔵アンパル（なぐらあんぱる、名蔵網張）は、
日本の沖縄県石垣市西部に位置する
干潟およびマングローブ林を含む地域です。
地元では単にアンパルと呼ばれています。
アンパルには網張という漢字があてられ、
真栄里マニカという賊を捕らえるため、
名蔵川周囲を村民総出で網を張るがごとく
包囲したことに由来すると
言われていますが、
「網を張って漁をする」あるいは
「人頭税からの逃亡者を捕える」
との説もあります。
八重山列島を構成する
石垣島西部、名蔵湾奥の
名蔵川河口周辺の砂州で
囲まれた干潟およびマングローブ林、
原野を中心とした地域です。
このマングローブ林は
環境省の特定植物群落である
「名蔵川河口域のマングローブ林」
に指定されています。
【国指定の鳥獣保護区】
名蔵アンパルには
亜熱帯気候特有の動植物が分布しており、
特に貴重な野鳥の飛来地、
生息地となっています。
このことから、２００３年（平成１５年）１１月１日に
それまでの沖縄県指定の
名蔵鳥獣保護区（集団渡来地）から
国指定の鳥獣保護区（希少鳥獣生息地）
に格上げされ、約７４ｈａの地域が
特別保護地区に指定されました。
２００４年（平成１６年）１１月１１日には
既存区域の後背地が
カンムリワシなどの採餌、
休息等の場所として特に重要なことから、
特別保護地区が１５７ｈａに
区域が拡張されています。
なお、国指定鳥獣保護区には
名蔵アンパルの前面海域も
指定されており、
鳥獣保護区全体の面積は１１４５ｈａです。
【西表石垣国立公園】
その後、名蔵アンパルは
２００５年（平成１７年）１１月８日に
ラムサール条約登録地に、
２００７年（平成１９年）８月１日に
西表国立公園（現西表石垣国立公園）の
拡張（石垣島の編入）に伴い
同国立公園の特別地域
（第１種特別地域128ha、第２種特別地域47ha）
に指定されました。
【地形・地質】
名蔵アンパルは名蔵川の河口部にできた
入り江であり、その入り江に土砂が堆積し、
マングローブ林が形成されました。
沿岸部には南北約２ｋｍに渡り砂州が発達し、
結果として潟湖が形成されました。
現在は砂州の上に道路が通っています。
２つの海峡部にはそれぞれ名蔵大橋、
名蔵小橋が架かっています。
海岸は珊瑚礁の
破片堆積物による白砂で
構成されているが、
近年赤土が流出し、環境問題となっています。
【植生・植物相】
＜マングローブ林＞
マングローブ林はアンパルを代表する植生です。
マングローブ植物はオヒルギ、
ハマザクロ（マヤプシギ）、ヒルギダマシ、
ヒルギモドキ、メヒルギ、
ヤエヤマヒルギの計６種が生育しています。
群落としてはオヒルギ－ヤエヤマヒルギ群落、
ヒルギダマシ－ヤエヤマヒルギ群落、
ヒルギモドキ群落があり、
マングローブ林の大半を
オヒルギ－ヤエヤマヒルギ群落が占めています。
次いでオヒルギ、ヤエヤマヒルギ、
ヒルギダマシの小群落がみられます。
メヒルギは少数が孤立して生育しており、
ハマザクロは稀にみられるのみです。
なお、本地域はハマザクロの北限地です。
＜モクマオウ林＞
砂州には防風林として
モクマオウが植林されています。
樹高１５ｍに達します。
その他低木としてアカギモドキ、
アダン、コンテリギ、トウツルモドキが、
林床にはクロイワザサ、
タイワンカモノハシが分布しています。
＜海岸林＞
海岸林はマングローブ林の後背林であり、
アカテツ、オオハマボウ、
クロヨナ、シマシラキ、
シャリンバイ、ミフクラギ、
ハスノハギリ、ハテルマギリ、
モクタチバナ、リュウキュウガキ
などが生育しています。
林内にはヤシの一種である
コミノクロツグを普通にみることができます。
＜海浜草本群落＞
海浜（海岸の砂地）には
ミルスベリヒユ、ソナレシバ、
ジシバリなどの海浜草本群落が
帯状に分布しています。
＜隆起珊瑚礁群落＞
アンパル北部、名蔵大橋付近の
僅かにある隆起した
珊瑚礁の岩礁上にイソマツ、
シオカゼテンツキ、ソナレムグラ、
ハマボッスなどの
隆起珊瑚礁群落が分布しています。
＜後背湿地＞
マングローブ林の後背湿地には
以下の群落がみられます。
＜ミミモチシダ群落＞
ミミモチシダ群落は、
アナジャコの塚や水路造成など
人の手の入った盛り土の上など、
周囲より少し高い場所に分布。
＜ヒトモトススキ群落＞
ヒトモトススキ群落は、
後背湿地の周囲より少し高い場所で
ミミモチシダやハイキビなどとともに
分布するほか、
マングローブ林内の周囲より
少し高い場所に単独で分布。
＜イボタクサギ－カニクサ群落＞
イボタクサギ – カニクサ群落は、
後背湿地の内、特に陸化の進んだ場所に、
コシダ、チガヤ、ハイキビなどとともに分布。
＜サキシマスオウノキ群落＞
サキシマスオウノキ群落は
後背湿地のうち淡水湿地に分布。
＜海草群落＞
海草群落として、
干潟域の潮間帯にコアマモが点在して
分布しており、
名蔵湾奥ではコアマモと
マツバウミジグサが
大規模に分布しています。
なお、コアマモは石垣島では
本地域１箇所のみに分布しています。
＜動物相＞
干潟域およびマングローブ林に
特徴的な底生生物（貝類、甲殻類）が生息し、
それらを餌とする多様な鳥類が
生息または渡りの休憩地として利用してます。
＜貝類＞
カニノテムシロ、カノコガイ、
カヤノミカニモリ、キバウミニナ、
コゲツノブエ、ネジヒダカワニナ、
ヒルギシジミ、リュウキュウウミニナなどの
貝類が生息しています。
＜甲殻類＞
マングローブを代表する
オキナワアナジャコや
国の天然記念物である
コムラサキオカヤドカリの他に、
コメツキガニ、ツノメチゴガニ、
オキナワハクセンシオマネキ、
ツノメガニ、ノコギリガザミ、
ハサミシャコエビ、ヒメシオマネキ、
ヒルギハシリイワガニ、
フタバオサガニ、ベニシオマネキ、
ミナミアシハラガニ、ミナミスナガニ、
ミナミコメツキガニ、
マングローブヌマエビなどの
甲殻類が生息しています。
＜魚類＞
サヨリ科、ニシン科、ボラ科、
カライワシ科、サバヒー科、
トウゴウロウイワシ科、カマス科、
ユゴイ科、テンジクダイ科、アジ科、
ミナミトビハゼなどの魚類が生息しています。
＜爬虫類・両生類＞
サキシマハブ、サキシマヌマガエル、
ホオグロヤモリなどの爬虫類・両生類が
生息しています。
＜鳥類＞
名蔵アンパルは、
シギ・チドリ類
（クロツラヘラサギ、セイタカシギ、アカアシシギなど）水鳥が
飛来するとともに、カンムリワシ、
リュウキュウツミ、チュウヒなどの猛禽類や
森林性鳥類が生息しています。
またシギ・チドリ類が多いことも特徴となります。
環境省による２００２年（平成１４年）
の調査では、１７０種（亜種含む）が
確認されています。
＜哺乳類＞
ヤエヤマオオコウモリ、
リュウキュウイノシシなどの
哺乳類が生息しています。
【環境問題】
アンパルには名蔵川のほかに
３本の流れ込み（排水路）がありますが、
沖縄県の他地域と同様に、
近年流れ込みからの赤土や
シルトの流出により陸化が進み、
環境が悪化しているということです。
さらには干潟域の減少に伴う
マングローブ林の増加、
精糖工場からの廃液流入などが
指摘されています。
【民謡】
地元では名蔵アンパルを舞台とした
「アンパルヌミダガーマユンタ」
（網張ぬ目高蟹ユンタ）という民謡が
歌い継がれているそうです。
ユンタとは八重山地方で
共同作業の時に謡われる「結い歌」です。
この歌では、目高蟹（ミダガーマ、ツノメガニ）の
誕生祝いを歌っていますが、
１５種類のカニたちが登場し、
それらのカニの生態を
非常に良く捉えて
擬人化されていることが
特徴的であるとのことです。
【名蔵アンパルまでのアクセス】
新石垣空港から車で約２５分、
離島ターミナルから車で約１５分の場所です。
新石垣空港⇒２１１号線を南下⇒
３９０号線と合流するので右折。
道なりに進む⇒Ｔ字路を左折⇒２１１号線へ入る。
西方へ道なりにまっすぐ進む⇒
「名蔵」の交差点を左折しまっすぐ進む。
⇒突き当たりで７９号線と合流⇒南下。
名蔵大橋を渡った先に駐車場で停車して
階段を降りると名蔵アンパルに到着。
＜注意＞
※階段が鎖で封鎖されており、
階段はコンクリート岸壁の途中までしか
行けませんとの情報アリ。
【名蔵アンパルでの遊び方】
ＳＵＰ(スタンドアップパドルボート）、
カヤックが行われており、
名蔵湾と合わせてのツアーがあります。
中でも人気なのが夕方頃スタートして、
名蔵アンパルのマングローブ湿地帯をＳＵＰ等で
クルーズして、日没が近づいてきたら
名蔵湾に出て、
サンセットをボードの上から満喫するコース。
献策してみてください。
【干潮時】
干潮の時は、名蔵大橋北駐車場の
反対側に降りる所があります。
そこから海岸をたどり橋の下をくぐると
マングローブのヒルギ林に達し、
さらに奥まで歩いて
入って行くことができるそうです。
水が流れている所は歩けるとのことですが、
干上がっている所は足を踏み入れると
埋まるので要注意とのこと。
潮が満ちてきたり、
大雨で一気に水位が
上がることを考えるとカヌーのほうが
安心とのことです。
＜下にはいけるらしい＞
訪れた時、１組のご夫婦が
ウエットスーツに着替えて、
靴はアウトドア用の
立派な長靴に履き替えて
散策の準備をしていました。
あいにくの雨でしたが、
お二人は駐車場側から
下へ降りていきました。
【名蔵アンパル駐車場所在地】
〒907-0021 沖縄県石垣市名蔵
県道７９号線「名蔵大橋」そば
１０台分の駐車スペース有り。
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