安倍文殊院~安倍一族の氏寺として大化元年に創建、日本三文殊に数えられています。

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【安倍文殊院】

安倍文殊院(あべもんじゅいん)は、
奈良県桜井市阿部にある華厳宗の寺院です。
山号は安倍山で本尊は文殊菩薩です。
開基は安倍倉梯麻呂(あべのくらはしまろ)とされています。
大化元年(645年)に創建された
日本最古に属する寺院です。
華厳宗東大寺の別格本山として
その格式も高く、
御本尊は「三人寄れば文殊の智恵」
のことわざでも有名な文殊菩薩で、
日本最大(約7m)であり、
快慶作の国宝となります。

◆切戸文殊(京都府・天橋立切戸)
◆亀岡文殊(山形県・奥州亀岡の文殊)
とともに日本三文殊に数えられています。
宗教法人名は文殊院です。

安部文殊院 境内案内図

【安部文殊院の歴史】
大化の改新の時に左大臣として
登用された安倍倉梯麻呂が
大化元年(645年)に
孝徳天皇の勅願もあって安倍氏の氏寺として
安倍山崇敬寺(安倍寺)を建立したのが
始まりとされています。

創建当時の寺地は
現在の文殊院の西南300mほどの
ところにありました。
平安時代末期に
多武峰の妙楽寺(現、談山神社)の
僧兵に焼き討ちされ、全焼してしまいます。

旧寺地(桜井市安倍木材団地1丁目)は
「安倍寺跡」として国の史跡に指定され、
史跡公園として整備されています。
発掘調査の結果、
安倍寺は東(右)に金堂、
西(左)に塔が建つ
法隆寺式伽藍配置をもっていたことがわかり、
出土した古瓦の様式年代からも
創建が7世紀にさかのぼる
寺院跡であると見られています。
「東大寺要録」巻6には、
東大寺の末寺の1つである
「崇敬寺」が安倍倉梯麻呂の建立であることと、
「崇敬寺」の別名が「安倍寺」
であったことが記載されているとのことです。



鎌倉時代に現在の
安倍文殊院の土地に移転しましたが、
興福寺官務牒疏によりますと、
塔頭寺院二十八坊の存在が
記されているように
大和十五大寺の一つとして栄えていました。
安倍寺が東大寺の末寺であったこともあり、
東大寺の復興に尽力した
重源上人の縁で仏師快慶の手によって
本尊の文殊菩薩像が作られました。
それにより満願寺は別名を文殊堂ともいわれ、
塔頭寺院も28坊あり
大和十五大寺の一つとして隆盛を誇ったのでした。

日本最大約7mと伝わる文殊菩薩(国宝)を
御本尊とする安倍文殊院は、
創建以来すでに1300年以上の時を経ていますが、
現在も常に人々の信仰を集める祈祷寺として
その法灯が守られています。

【境内について】
境内には弁財天、
奈良時代の遣唐使であった安倍仲麻呂、
平安時代の陰陽師の安倍晴明が祀られています。
方位災難除けの金閣浮御堂や
特別史跡の古墳、
安倍晴明が天文観測をしたと
伝わる展望台などがあります。

【松永久秀による再びの焼失】
永禄6年(1563年)、
松永久秀の兵火を受け、
一山ほとんどが火災で焼失しました。
本尊を始め幾つかの仏像は
焼け残りましたが、
建物はほぼ全焼し、衰微してしまいます。

【江戸時代に再建】
それから約100年後となる
寛文5年(1665年)に現在の本堂(文殊堂)が
再建されました。
本堂は入母屋造りの七間四面の建物で
前に礼堂(能楽舞台)を従えています。

安部文殊院 本堂と礼堂と桜

【明治時代以降】
明治になり、安倍文殊院は
廃仏毀釈をくぐりぬけ、
名称も文殊院というようになっていました。
かつて敵対していた
多武峰の妙楽寺は廃寺とされ、
新たに談山神社となりました。
その際、不要とされた
妙楽寺の本尊・阿弥陀三尊像は
くしくも安部文殊院が引き取ることとなりました。
明治16年(1883年)に
安部文殊院に移されます。
なぜか釈迦三尊像
(桜井市指定有形文化財)として祀られ、
現在も保存されています。

安部文殊院では陰陽師の安倍晴明が
陰陽道の修行をしたともいわれ、
2004年(平成16年)には
晴明堂が200年ぶりに再建されています。
2010年(平成22年)には、
安倍氏と関わりがあるとされる
安倍晋三氏が
「第90代内閣総理大臣 安倍晋三」
名義で石燈籠を寄進しています。

<石燈籠群>
安部文殊院 石灯籠

毎年9月中旬~10月下旬頃には
コスモス畑を
迷路にして遊べるようになっています。



【境内案内】
【白山堂(白山神社本殿)】
(重要文化財)
重要文化財指定名称は「白山神社本殿」。
室町時代後期に建立された
流造屋根柿葺(こけらぶき)で
美しい曲線の唐破風をもった社殿で、
国の重要文化財にも指定されています。
御祭神は全国の白山神社に祀られる
白山比咩神(しらやまひめのかみ)と
同一神である菊理媛神(くくりひめのかみ)で、
縁結びの神として知られています。
安部文殊院の鎮守です。
白山信仰と陰陽道は
古くより深く結びついた為、
安倍晴明ゆかりのこの安倍文殊院に
白山神社の末社が勧請されました。
菊理媛神は「日本書紀」によりますと
伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と
伊弉冉尊(いざなみのみこと)の縁を
取り持たれた神様で、
菊理媛の「くくり」は「括る」にもつながり、
古来より縁結びの神様としても信仰されています。

安部文殊院 白山堂(白山神社本殿)

【文殊院西古墳(特別史跡)】
西古墳は、飛鳥時代に造立されました。
国の指定史跡の中で
特に重要である「特別史跡」に
指定されています。
径25mほどの
円墳であったと見られています。
横穴式石室が露出しており、
切石造石室の代表的なものとされています。

文殊院西古墳(特別史跡)

古墳の特別史跡指定は全国でも数件で、
◆明日香の石舞台古墳
◆キトラ古墳
◆高松塚古墳
と共に、文殊院当山の境内に
は二か所の史跡指定古墳を有しています。
この西古墳の内部は、
大化元年(645年)当時のまま保存されており、
石材は良質な花崗岩を加工し、
左右対称に石組みがされています。
また玄室の天井岩は一枚の石で、
大きさは15㎡あり、
中央部分はアーチ状に削られています。
古墳内部の築造技術の美しさは
日本一としても定評があります。
現在、この古墳には弘法大師が造られたと伝わる
「願掛け不動」がお祀りされていますが、
本来は大化元年に初の左大臣となり
文殊院を創建した
安倍倉梯麻呂の墓と伝えられています。

【本堂】
(桜井市指定有形文化財)
寛文5年(1665年)に
元安倍寺満願寺の本堂として
建立された建物で、
快慶作の木造騎獅文殊菩薩及び
脇侍像が安置されています。

安部文殊院 木造騎獅文殊菩薩及び 脇侍像

【釈迦堂】
本堂に付属して建てられています。
元は多武峰妙楽寺の本尊であった
釈迦三尊像が安置されています。

【本坊】
(奈良県指定有形文化財)
安土桃山時代に建立されました。
元は大神神社神宮寺の
大御輪寺(現・大直禰子神社)の客殿でした。
明治元年(1868年)に
大御輪寺が廃されたので
客殿が移築されました。

【稲荷神社】
安倍晴明の母親とされる
白狐の信太森葛葉稲荷を祀っています。
江戸時代までは
文殊院西古墳の上に
建てられていました。

【五台閣】
参拝者が抹茶を召し上がる場所。

【吉祥閣】
僧侶の法話を聴き、抹茶・お点前体験や
健康薬膳精進料理を召し上がる場所。
(予約団体のみ)



【文殊池】
安部文殊院 文殊池

【金閣浮御堂(霊宝館)】
1985年(昭和60年)に
建立された文殊池の中に建つ
金色の六角堂で、
金閣浮御堂・霊宝館は
開運弁財天(大和七福神)、
安倍仲麻呂、安倍晴明の御尊像、
安倍晴明の御尊軸をはじめ
陰陽道に関する宝物をお祀りしている御堂です。

金閣浮御堂(霊宝館)

堂内の六面の壁面には
秘仏の十二天御尊軸(室町時代)が
お祀りされています。
十二天とは四方(東・西・南・北)と、
四隅(東北・東南・西北・西南)の八方、
天と地、日と月、すべての方角を司る守護神です。
秘仏の十二天御尊軸(室町時代)は、
春夏秋冬の寺宝展にて三体ずつ限定公開しています。
なお、弁財天大祭(4月最終土曜~5月第一日曜)では
十二天御尊軸が全て開帳となります。

<春:3~5月>
北東:伊舎那天
東:帝釈天
南東:火天

<夏:6月~8月>
天:梵天
日:日天
南:閻魔天

<秋:9月~11月>
南西:羅刹天
西:水天
北西:風天

<冬:12月~2月>
月:月天
地:地天
北:毘沙門天

<七まいり>
古来より七難即滅七福即生、
人々は一生の内に七つの
思いがけない災難があると言われています。
この御堂は「七まいり」という
魔除け・方位災難除けを祈願する
願掛けの修行場となっています。
「七まいり」では、
そうした七難に遭わないために、
旅行や転勤、引越しなど、
どの方角に向かっても災難が起きぬ様、
魔除け・方位災難除けの神仏が
安置されている御堂の回廊を
「おさめ札」を納めながら七回まわります。
七難を取り除き、堂内で福を得る参拝の方法です。

安部文殊院 七まいり

【文殊院東古墳】
(奈良県指定史跡)
7世紀前半に築造されたといわれる古墳です。
古来から閼伽井窟(あかいくつ)と呼ばれ、
信仰の対象とされてきました。
閼伽井とは「閼伽水の井戸」と意味で
羨道の中程に古来より枯れる事のない
泉があったことが由来しています。
この泉の水は「閼伽水(知恵の水)」といい、
法要などに使う清浄な水として使用されていました。

文殊院東古墳

<羨道(えんどう)>
古墳の横穴式石室や横穴墓等の
玄室と外部とを結ぶ通路部分のことです。

【晴明堂】
2004年(平成16年)、
安倍晴明千回忌を迎えるにあたり
200年ぶりに再建されました。

【文化財】
(国宝)
◆木造騎獅文殊菩薩及び脇侍像 4躯
快慶作
文殊菩薩像内に建仁三年十月、
南無阿弥陀仏、巧匠安阿弥陀仏等の銘がある

附一 仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言・文殊種子1巻
奥に承久二年、病比丘空阿弥陀仏の記がある

附二 木造最勝老人立像1躯
宗印作 像内に住吉大明神也、
慶長十二年、南都大仏師宗印等の銘がある

(重要文化財)
◆白山神社本殿

(国指定特別史跡)
◆文殊院西古墳

(奈良県指定有形文化財)
◆本坊

(奈良県指定史跡)
◆文殊院東古墳

(桜井市指定有形文化財)
◆本堂(礼堂付)
◆木造釈迦三尊像
元は多武峰妙楽寺の本尊・阿弥陀三尊像。
安部文殊院に移された際に釈迦三尊像とされた。

◆木造大日如来坐像
元は安倍寺の本尊。

【前後の札所】
<大和十三仏霊場>
2:西大寺
3:安倍文殊院
4: 長岳寺

<大和七福八宝めぐり(弁財天)>
<大和北部八十八ヶ所霊場>
81:平等寺
82:安倍文殊院 
83: 本光明寺

<大和ぼけ封じ霊場>
<神仏霊場巡拝の道>
33:橿原神宮
34:安倍文殊院
35:長谷寺

【拝観時間】
午前9時~午後5時
年中無休

【拝観料】
<本堂・金閣浮御堂 共通参拝>
大人:1200円
小学生:800円

<本堂 国宝・文殊菩薩 (参拝記念品付)>
大人:700円
小学生:500円
智恵のらくがん(記念品)

<金閣浮御堂霊宝館>
(七まいりおさめ札・御守り付)
大人:700円
小学生:500円

電子マネー決済対応
Suica , iD , UnionPay , PiTaPa , QuicPay , Edy , PayPay

【交通アクセス】
JR桜井線・近鉄大阪線「桜井」駅より
奈良交通バスで「安倍文殊院」下車
または駅から徒歩25分程度。

【駐車場】
300台分
有料:500円



【所在地】
〒633-0054 奈良県桜井市阿部645

<カーナビ>
住所を入力する場合 :
〒633-0054 奈良県桜井市阿部645
電話番号を入力する場合: 0744-43-0002

所要時間:30分~

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