温泉分類・療養泉の種類と適応症について。

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先日都内にて「温泉ソムリエ」について受講してきました。
これまで何度か、温泉と家庭での入浴方法など紹介してきましたが、
いよいよ今回から温泉について紹介していきたいと思います。
温泉やお風呂の正しい入浴方法について~入浴五か条及びそのスタイル。
温泉の定義について~日本の場合・温度や効果や海や山など。
温泉やお風呂の正しい入浴方法について~お湯の温度によって方法が異なるのです。
「温泉」と呼ばれるものには「泉質(せんしつ)」として10種類に大別されています。
正式な泉質名と、掲示用泉質名は異なりまして、以下に挙げるものは掲示用泉質となります。
なお、平成26年(2014年)7月に改訂がありまして、
それ以前は9種類・11種類(「含アルミニウム泉」「含銅泉」)でした。
このように泉質がつく温泉には各「適応症」が言われていますが、
更にこの「適応症」が認められるためには、「療養泉(りょうようせん)」でなければなりません。
「療養泉の定義」
1)厳選温度が25度以上
または
2)含有成分に関する7つの特定条件のうち1つ以上基準を満たしているもの。
「療養泉」のみが温泉の効果が公式に認められているのです。
「温泉」でも「適応症」がないものがあります。
「泉質名」がついて、初めて「適応症」が認められるのです。
<掲示用泉質・2014年7月より>
「単純温泉」「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「二酸化炭素泉」
「含鉄泉」「硫黄泉」「酸性泉」「放射線泉」「含よう素泉」
<掲示用泉質・2014年7月以前>
「単純温泉」「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「二酸化炭素泉」
「含鉄泉」「硫黄泉」「酸性泉」「放射線泉」「含アルミニウム泉」「含銅泉」
<浸透圧による分類>
療養泉の具体的な説明の前に浸透圧の分類について説明します。
人間の体を構成している細胞液と等しい浸透圧を持つ液体を等張液といいますが、
これは8.8gの食塩を1リットルの水に溶かした食塩水に相当するそうです。
この等張液を基準にして温泉を比較すると、以下の3つに分類されるそうです。
<低張性>
等張液よりも浸透圧の低い物(8g/kg未満)⇒水分が吸収されやすい(ふやけやすい)
<等張性>
等張液と同じ浸透圧を持つもの(8-10g/kg未満)
<高張性>
等張液よりも高い浸透圧を持つもの(10g/kg以上)⇒成分が吸収されやすい(湯あたりしやすい)
従って・・・<等張性><高張性>の温泉は「濃い温泉」である。
<水素イオンによる分類>
<強アルカリ性>⇒pH10以上⇒美肌効果あり!つるつる
<アルカリ性>⇒pH8.5以上⇒美肌効果あり!つるつる
<弱アルカリ性>⇒pH7.5-8.5未満⇒美肌効果あり!つるつる
<中性>⇒pH6-7.5未満
<弱酸性>⇒pH3-6未満⇒殺菌効果あり(皮膚病)ぴりぴりする
<酸性>⇒pH2-3未満⇒殺菌効果あり(皮膚病)ぴりぴりする
<強酸性>pH2未満※現在の鉱泉分析法指針では3未満は酸性。
<温泉分析書と共に掲示すべき4項目>
「加水」⇒加水していれば成分は薄まる。
「加温」⇒加温するとガス成分などが失われやすい。
「ろ過・循環」⇒温泉の鮮度が落ちやすく、消毒しないとレジオネラ菌が繁殖しやすい)
「添加」⇒塩素系消毒剤などを入れると温泉の酸化など変質が進みやすい。
     入浴剤を入れると成分が変わる。
※※「加水」と「加温」が同時の場合は温泉の供給量が不足しており、
かなりの加水率=水増しであることが推測できてしまう。



<平成26年(2014年)7月1日以降>
【単純温泉】
日本で最も多い分類の泉質です。
含有成分の量が一定に達していないもので、
つまりは身体に優しく刺激が少ない温泉です。
高齢者や子供、デリケートな女性向けで最も湯あたりがしにくい温泉でもあります。
子供からお年寄りまで安心して入浴できる「家族の湯」なのです。
これに弱アルカリ性が加わると、「美肌の湯」となります。
【塩化物泉】
日本で2番目に多い分類の泉質です。
海水の成分に似た食塩を含み、塩辛く無色透明の温泉です。
身体がよく温まり、汗の蒸発を防ぎ、保温効果があります。
温泉成分のコーティング効果があるため、保湿剤の様な役目を果たします。
肌の確執を取る「美人の湯」の後に入ると、
肌の乾燥を防ぐことができて「美人の仕上」にもなります。
定義は5.5g/kg(5500mg/kg)以上、かつ塩素イオン8.5g/kg(8500mg/kg)以上、
またはナトリウムイオン塩素イオンがどちらも240ミリバル/kg以上」のものである。
【炭酸水素塩泉】
旧分類では「重炭素土類泉」と「重曹泉」に分かれていました。
「重炭素土類泉」はカルシウムー炭酸水素塩泉・マグネシウムー炭酸水素塩泉で
「重曹泉」はナトリウムー炭酸水素塩泉です。
「重炭素土類泉」は、
アレルギー疾患・慢性皮膚病・蕁麻疹に効果があります。
カルシウム及びマグネシウムイオンによる鎮静効果があります。
更に、飲用することによって
利尿作用・痛風・尿路結石・膀胱炎・糖尿病に効果があります。
万戦胃腸障害にも効果があります。
色は、基本的には無色透明ですが、成分のバランスにより、
濁る事や湯船に白淡褐色の成分が付着することがあります。
「重曹泉」は、
皮膚をせっけんのように綺麗に洗い流し、
皮膚表面から水分の発散が盛んになり、
体温が放散されるので「清涼の湯」と言われています。
典型的な「美肌の湯」で「清涼の湯(冷えの湯)」とされています。
【硫酸塩泉】
含有成分により、カルシウムー硫酸塩泉(石膏泉)、
ナトリウムー硫酸塩泉(芒硝泉・ぼうしょうせん)、
マグネシウムー硫酸塩泉(正苦味泉・せいくみせん)に分かれているそうです。
各々、若干効果に差異があるそうです。
「カルシウムー硫酸塩泉(石膏泉)」は、
カルシウムの鎮静効果が高いため、「傷の湯」「脳卒中の湯」と称されてきました。
高血圧・動脈硬化・慢性関節リウマチ・切り傷・火傷・捻挫などにも良いそうです。
ニキビや湿疹にも良いともいわれています。
「ナトリウムー硫酸塩泉(芒硝泉・ぼうしょうせん)」は、
高血圧・動脈硬化・外傷に効いて、
飲用では、糖尿病・慢性便秘・肥満・痛風に良いそうです。
また、保温効果で体が温まり、痛みを和らげる鎮静効果があるそうです。
「マグネシウムー硫酸塩泉(正苦味泉・せいくみせん)」は、
上記の泉質と同じ適応症があると言われています。
マグネシウムが多く含まれているので、
血圧を下げて痛みを和らげる鎮静効果があるそうです。
飲用もできますが、無色透明無臭ですが、特有の苦みがあるそうです。
【二酸化炭素泉】
炭酸ガスを含む温泉の事で、
厳密には「遊離二酸化炭素」が規定値に達した泉質の事です。
泉温が高くなると炭酸が気化、遊離してしまうため、一般的に泉温は低いのです。
入浴すると小さな気泡が体に付着するので「泡の湯」とも言われております。
炭酸ガスは皮膚から吸収されて、
毛細血管や縮小動脈を拡張し血液の循環を良くするため、
泉温が低くても、からだは温まります。
また、心臓の拍動を増加させなくても血液の循環がよくなるため、血圧を下げる効果もあります。
そのため「心臓の湯」とも称されています。
湯あたりしにくい温泉でもあります。
成分が失われやすい泉質なので、加温や循環はしておらず、
鮮度がよいことが大切なのです。
湯あたりはしにくのですが、注意点があります。
それは、源泉や湯口での二酸化炭素中毒にご注意ください。
天然の二酸化炭素泉は全国でも多くはありません。
【含鉄泉】
鉄分を含み、空気に触れて酸化すると茶褐色(鉄さび色)に変色します。
浴用では、とても温まるために、
リウマチ・更年期障害・子宮発育不全・湿疹に適応症があります。
飲用も可能で、胃酸の分泌を高め、鉄の吸収をあげるので、貧血への適応症もあります。
実は「赤湯」と呼ばれる温泉は結構な数があるのですが、
「含鉄泉」の規定値まで鉄を含んている温泉は少なく、希少な温泉なのです。
ちなみに「赤湯」とは、含鉄泉ほどの鉄分の含有量はないのですが、
塩化ナトリウムの影響で鉄さび色に変色したものなのです。
従いまして、含鉄泉という泉質名がつくと、
時間の経過とともに鉄分の酸化が進んでかなりの濃い「濁り湯」となるわけなのです。
含鉄泉でとても有名なのがあの「有馬温泉(ありまおんせん)・兵庫県」です。



【酸性泉】
以下の2種類の温泉があります。
「硫黄型」⇒遊離硫化水素の含有量が少ない。エメラルドグリーン。
「硫化水素型」⇒遊離硫化水素が主体成分である。乳白色。
金属品は酸化して黒ずんでしまうため、
装飾品は外して入浴した方が良いとの事です。
また、換気の悪い浴場では、硫化水素ガスで中毒を起こしやすいので、
注意したいのですが、
一方で、その硫化水素ガスは「痰の湯」と称されている通り、
この硫化水素ガスによって、痰(たん)がでやすくなるので
慢性気管支炎・慢性関節炎やリウマチ・慢性皮膚病に適応症があります。
また「硫黄型」には解毒作用もあるので、
金属や薬物中毒にも利用されているそうです。
しかし、体に強い変調作用を与えるため、
病弱者や高齢者はなるべく避けた方がよさそうsです。
更に皮膚のデリケートな方も、湯あたりや皮膚炎を起こしやすいので
ご注意ください。
においは、いわゆるゆで卵の腐ったようなあの匂いです。
ある意味では最も「温泉」らしい泉質と言えそうですが、
湯あたりしやすい温泉なのです。
関東で有名なのは「万座温泉(まんざおんせん)・群馬県」、
「箱根芦之湯温泉(はこねあしのゆおんせん)・神奈川県」です。
【酸性泉】
文字通りに、pH値が低くて酸性度の高い温泉です。
無色透明もしくは微黄褐色で酸味があります。
抗菌力があるので、
白癬(はくせん)症・かいせん症に適応症があります。
刺激がかなり強いので、
病弱者や高齢者並びに皮膚のデリケートな方には適しません。
そうでない方も、体に強く作用し、肌にしみ込みやすいので、
入浴後の上がり湯には、
シャワーなどで洗い流して十分にふき取ることが望ましいそうです。
更に、強い刺激を軽減するためにも、肌の角質はのこしておいた方が良いので、
せっけんやボディソープで体を洗うことも避けた方が良いとされています。
洗い場に専用のボディソープが設置している処もありますね。
刺激が強い分、「湯あたり」しやすい温泉です。
関東で有名なのが、歌でおなじみの「草津温泉(くさつおんせん)・群馬県」です。
上記の「万座温泉(まんざおんせん)・群馬県」も該当します。
【放射線泉】
定義から説明しますと、
ラジウムという放射性物質がアルファ崩壊を起こした時にできる、
気体の放射性物質「ラドン」を含む温泉の事でいわゆる「ラドン温泉」と呼ばれている温泉です。
「ホルミシス効果」といって微量な放射線で体に負荷をかけることにより免疫絵力が上がると
いわれておるそうです。
「ラドン」は体内に取り込まれても数時間で排泄され、
半減期が3.82日と非常に短いので、
「体に良いことだけしてすぐに消えてしまう」成分であるため、安心できるものなのです。
「ラドン」は浴用・飲用でも体内に吸収されますが、
吸入が最も体内に吸収されるそうです。
尿路慢性炎症・生殖器関係・下垂体副腎系・痛風・糖尿病に適応症があるそうです。
腎機能にも適応症があり、神経痛・リウマチ・自律神経過敏状態などにも
適応症があるとの事です。
尿酸を尿から出すので「痛風の湯」とも称されています。
ただし、適応症が高い分、湯あたりも起こしやすいのでご注意ください。
無色透明で薬効の効率が最も高いそうです。
数も少なく、希少で貴重な温泉と言えます。
私のおススメは、関東甲信越地方となりますが、
「増富ラジウム温泉郷(ましとみらじうむおんせんきょう)・山梨県」です。
【含よう素泉】
うがい薬でおなじみのよう素で、強い酸化力で殺菌作用を発揮します。
体内では、甲状腺ホルモンの主成分で大変重要な働きをします。
ただし、甲状腺機能亢進症の方にとっては禁忌となりますので入らないでください。
逆に、よう素不足の方には、大きな効果が期待できる泉質です。
適応症としては、高コレステロール血症のみとなります。
関東では、ビジネス街にある「大手町温泉(おおてまちおんせん)・東京都」や
「白子温泉(しらこおんせん)・千葉県」にあります。
以上で、駆け足ですが、療養泉の種類と適応症について、説明いたしました。
長文になってしまいましたが、
最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。

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